突然ですが、「あなたのお家に『玄関』はありますか?」と尋ねられたらどう思いますか?
「何を当たり前の事を!」と思うかもしれません。
現代において、家に『玄関』がある事は当たり前となっています。
しかし、昔の一般庶民が住む家屋に『玄関』は存在しなかったのです。
普段の生活で、毎日必ず使っている「玄関」ですが、「玄関」という字を見てもその意味はよく分かりません。
実はこの「玄関」が仏教語なのです。
本来は建物の名前ではなく、自覚としての「深いさとり(=玄)に入るための関門」という意味でした。
それが中世、禅宗の発展に伴って悟りを開く道場としての禅宗寺院の入口を指すようになり、
次いで、武家の住宅に取り入れられて意味が大きく変化しました。
もともと中世の人々は、貴族にしても庶民にしても屋敷や家の縁側のようなところから出入りしていたので、玄関を必要とはしていませんでした。
やがて室町時代になると寺院建築にもっとも使われていた『書院造(しょいんづくり)』という建築様式が、朝廷の人々や各地の将軍の屋敷に採り入れられるようになったのです。
すると、次第に屋敷の車寄せや入り口に近い客間や家来が控えている部屋のある場所を、寺院ではないけど『玄関』と呼ぶようになりました。
さらに時代は進み、江戸時代の名主の邸宅には必ず玄関が備え付けられました。
つまり、玄関のある屋敷は『名主の家』という意味になったそうです。
ちなみに一般庶民の家の入り口は『おおど』と言いました。
現代では、家屋にかぎらず大きなビルや商業施設の入り口を『玄関ロビー』や『正面玄関』と呼びますし、
大きな駅や空港は『街の玄関』や『空の玄関』といった呼び名で親しまれています。
参考 『文藝春秋』2012年11月号・仏教用語豆事典・ブッディズム J HPなど
○本照寺住職 木村映之 住所 佐賀県鳥栖市本町1-886 電話 0942-82-4461
○浄土真宗東本願寺派 瑞雲山来迎院 本照寺
※どなたでも参加できる行事… ボイストレーニング教室、ヨガ教室、坐禅会、寺子屋(小学生)、オカリナを楽しむ会木曜会(いすヨガ・法話・茶話会)