鐘楼の耐震性

鐘楼の耐震性

鐘楼の耐震性

2019年11月10日
テーマ
雑学

設計の小林です。
仕事の関係で先日、鐘楼をじっくり見る機会がありまして、
その際に耐震性についてちょっと考えましたのでそのことを書かせていただきます。

1. 4本の柱は内側に傾いている。いわゆる『四方ころび』になっていて、中央の重心を安定した形で支えるような構造になっている。

2. 屋根は跳ね出しも大きく、瓦葺で重量もあるので、地震の際にも『やじろべえ』的なバランスをとる効果がある。

3. 釣鐘は重く、地震の揺れの際にも『慣性の法則』でそのままの位置を保とうとするので、
建物があまり揺れないような『制振』の装置となっている。
この釣鐘は、重心がある程度低いほうがより効果がありそうです。

4. 柱の根本付近に貫が廻っていて、地震の際にも、建物の柱がバラバラにならないように固めている効果がある。
この貫は、建物が大きく傾くと貫の曲げ強さで抵抗し、貫が柱に食い込んでその摩擦が大きくなり、
ある程度以上の傾きを抑制しようという効果があります。

5. 柱の柱脚は、石の上に乗っているという『石端建て』というある種の『免振構造』なので、地面が揺れても
その揺れが建物に直接伝わらず、ある程度低減されてその摩擦分のみが伝わるので、地震の入力エネルギーが低減される。

上記の『貫』で建物の足元が固まっていれば、石の上でカタカタ動くようなモデルのイメージとなります。

さらにこのことは、地震の揺れのスピードが速いほど『だるま落とし』のように、建物に伝わる摩擦エネルギーも小さくなります。

上記の①~⑤が組み合わさって、耐震性のある架構が完成されているように感じました。

形のバランスのいい美しい鐘楼は、構造的にもとても合理的ですね!

鐘楼の構造.jpg

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