『貫と筋交いの共存はお互いに補強しあう』という考えについて 1

『貫と筋交いの共存はお互いに補強しあう』という考えについて 1

『貫と筋交いの共存はお互いに補強しあう』という考えについて 1

2021年02月21日
テーマ
雑学

設計の小林です。

前回少しだけ写真で見ていただいた建物の構造の、私の考えで、
『伝統工法の貫と現代の工法の筋交いは、とても大きな地震の際に、
お互いの弱点を補強しあって、より強固で合理的な構造になる』という
仮説について、今後数回にわたり、お話させていただきたいと思っています。

まずは、貫についてですが、
1. 貫は伝統工法においては土壁の下地としても設けられていたので、
 建物全体に、窓の部分も、窓下の腰壁や、窓上の垂れ壁にも設けられていたので、
 建物の壁部分全体をつなぎ、建物全体が立体的に、一体的な構造物となり、
 大きな地震などの水平力を全体にスムーズに流すことができます。
 構造的な弱点になる箇所があれば、外力はそこに集中していき、
 そこから破損がはじまりますので、このような状態を避けることができます。
 また、大きな開口部の部分の腰壁や垂れ壁には、差し鴨居や腰張りを設けることで、
 軸組の補強とともに、そこにも束を建て、貫を通すことで、
 さらに開口部の補強としての効果が高まります。
 (昔の古民家で、2階が載っている部分の1階には、よく差し鴨居が設けてありますね。)

2. この貫は、文字通り柱を貫き、くさびで留めてありますので、
 大きな地震の際にも抜けることが無く、
 さらにそのことで、それぞれの柱が抜けたりすることを防ぐ効果があります。

3. そして、この貫とくさびは、大きな地震等の大きな水平力で、建物が傾いてくると、
 柱とのめり込みが大きくなり、建物の倒壊を防ぐ効果が大きくなってきます。
 とてもねばり強い、柔らかい柔構造といえます。

4. ①の内容と関連しますが、建物全体のの木と木との接点数が多いほど、
 地震などのエネルギーは、その分分散され、各接点にかかる力は小さくなります。

以上のような貫ですが、あえてそのデメリットは、柔構造のため、
揺れの初期の、変形が小さいときに、多少変形してしまうことでしょうか。

このことを、筋交いを併用することで、建物の初期剛性(変形のしにくさ)を筋交いに負担してもらい、
そのデメリットも解消できると考えています。

そして、次回は、(今回とは逆に)筋交いのデメリットを貫が補ってくれるという考えを書かせて
いただこうと思っております。



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